危険!風邪薬を飲み過ぎた時のリスクと対処法
身近だからこそ危険性を感じにくい風邪薬、ですが、総合感冒薬(総合風邪薬)は市販薬の中でも副作用発生件数、死亡件数ともに1位となる程注意が必要な薬です。
風邪薬のリスクと症状、そして万が一飲みすぎてしまった場合の対処法についてみていきましょう。
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風邪薬とその危険性
日本は薬大国と言われるほど世界的にも薬を多用する国であり、「薬を飲めば良くなる」という認識が広く浸透しています。実際、風邪を引きそう、頭痛がする、などと感じたら薬を飲む人も多いのではないでしょうか。このように日本人にとって大変身近な市販薬ですが、実は様々な副作用、そして場合によっては命に関わる病を引き起こす可能性があります。
市販の風邪薬が原因となって発症した事例は数多く報告されており、その数は5年間で1,200件を超え、そのうち15名の死者が出てしまった過去があります。市販薬は医療機関で処方される薬に比べれば作用が弱いことも事実ですが、少量で人体に作用をもたらすものであることには変わりません。
薬の効果が感じられない、飲み忘れ、などの理由から自己判断で摂取量を増やす(過剰投与)ことは避けましょう。
風邪薬の飲み過ぎによる影響
風邪薬に含まれる成分のうち、重篤な症状を引き起こすとされている代表的な成分を紹介します。
- アセトアミノフェン:解熱鎮痛作用
- ジヒドロコデイン:鎮咳作用
- カフェイン:鎮痛作用
- イブプロフェン:解熱鎮痛作用
- メチルエフェドリン塩酸塩:鎮咳作用
アセトアミノフェンの飲み過ぎ
アセトアミノフェンは解熱鎮痛作用をもつ成分であり、用法容量を守って摂取すれば副作用も少なく、幼児から使用できるほど安全性の高い成分です。しかし、肝臓で代謝される際にその一部が強い毒素(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)となります。少量であれば即座に解毒されますが、量が多いと処理が間に合わず肝臓の細胞を壊し、重大な障害を引き起こしてしまいます。
アセトアミノフェンは風邪薬だけでなく様々な市販薬に配合されており、複数の薬を同時に摂取するとアセトアミノフェンを過剰摂取してしまう可能性があります。くれぐれも他の薬を一緒に飲むことはやめましょう。
摂取量は成人で4,000mg/日が上限となっています。幼児の場合は体重10kgで150mg/日まで、20kgで300mg/日まで、30kgで450mg/日までが目安の摂取量となっています。
また、年齢に関わらず24時間以内に体重1kgあたり150mg以上、もしくは48時間で合計6,000mg以上を服用した場合、症状に関わらず早急な医療機関での受診が必要となります。
アセトアミノフェンの過剰投与による症状は服用後、約12時間経過してから発現することが多いとされています。治療は早期に行えば行うほど回復も早く、後遺症も残りにくいです。そして医療機関への受診をすれば殆どの場合重症化することなく、治療可能です。
ジヒドロコデインの飲み過ぎ
ジヒドロコデイン塩酸塩は咳を鎮める作用と弱い鎮痛、鎮静作用があるとされています。即効性があり、作用が強いことで知られていますが、習慣性(依存性)があり長期での使用はできません。
摂取量目安量はジヒドロコデインリン酸塩で、1日30mg(1回10mg)となっています。
この成分は麻薬性があり、止められない、もしくは止めると不安感や吐き気、頭痛等の症状が出るとされています。一度習慣化してしまうと一人で止めることができなくなる可能性もありますので薬はどうしても必要な時だけとしましょう。
カフェインの飲み過ぎ
カフェインは眠気覚ましの効果で知られていますが、鎮痛作用を併せ持ちます。また、特に頭痛薬となる成分の効果を高める作用があるとして多くの市販薬に配合されている成分であす。
身近な成分ではありますが、短時間の過剰摂取は急性中毒となり、吐き気や心拍数の増加、焦燥感などの症状から、重度となると頭痛や痙攣、幻覚などの症状が出る恐れがあります。
カフェインの摂取量は体重によって決まります。以下の表は急性カフェイン中毒を発症する量と体重の関係を示したものです。
体重 | カフェイン(mg/3時間) |
40 | 680 |
45 | 770 |
50 | 850 |
55 | 940 |
60 | 1020 |
65 | 1110 |
70 | 1190 |
75 | 1280 |
80 | 1360 |
市販の風邪薬とカフェインの含有量は1回分で20mg~80mgとなっており、含有量の多い市販薬としてはイブやバファリン(プレミアム、ルナ)があります。錠剤1粒、2粒という少量でもそれだけの量が含まれているため、効き目が薄いなどの理由での多飲は禁物です。
また、カフェインで気を付けなくてはならないことは、薬での過剰投与はもちろんのこと、コーヒーや紅茶などの飲み物、栄養ドリンク、眠気除去薬といったものと並行して摂取してしまうことです。特に眠気除去薬には1本あたり200mgものカフェインが含まれたものもあります。
イブプロフェンの飲み過ぎ
解熱鎮痛作用をもつイブプロフェンは解熱、鎮痛、消炎の作用をバランスよく持ち、比較的作用も強いことから多くの風邪薬に配合されている成分です。
副作用としては胃腸障害、発疹、喘息があります。
イブプロフェンの作用は炎症を引き起こす成分、プロスタグラジンの生成を抑制することによってその効果を発揮します。プロスタグラジンは胃液の分泌抑制をはじめ、身体の様々な箇所に作用する物質であるため、生成が抑制されることで風邪の症状を抑える以外にも影響が出ます。
1日あたりの摂取量は成人で600mgまでとなっており、市販の風邪薬は1日あたり450mgの摂取量となるような配合になっていることが多いです。また、この成分が含まれる市販薬は15歳以上、胃への影響を緩和するため食後の服用です。
イブプロフェンによる重篤な症状はアナフィキラシー、消化管潰瘍、胃腸出血、肝臓障害、腎臓障害など多岐に渡ります。
メチルエフェドリン塩酸塩の飲み過ぎ
メチルエフェドリンは血管収縮作用があり、腫れた気道を広げることで咳止め効果があるとされています。また、弱い抗アレルギー作用があるとされています。副作用は少ない方ですが、過剰投与によって血圧が上昇し、動悸、頭痛、めまいなどの症状が出る可能性があり、場合によって重篤な低カリウム血症※を引き起こす可能性があります。
1日あたりの摂取量は成人で1日75~150mgとされています。
※低カリウム血症とは血中のカリウム量が低下する状態を示し、症状としては麻痺や自律神経の失調、強い痙攣があげられます。
風邪薬を飲みすぎた時の対処法
市販の風邪薬を過剰に飲んでしまった場合、可能であれば大量の水を飲んで吐き出すことが望しいです。そして、すぐに服用していた薬を持って(もしくはその情報がわかるものを持って)医療機関へ受診しましょう。
できる限り早い治療が早い回復につながります。また、こうした場合の治療は薬を飲んでからの経過時間によって治療法が変わってきますので、服用した時間が重要となります。
一度使用して発疹などの症状が出た場合、その薬の使用は一切止めましょう。場合によってはアナフィキラシーショック※のような激しい拒絶反応を招く危険性があります。
風邪の原因となるウィルスや細菌を退治するのは私たち自身の身体(免疫機能)であり、市販薬には様々なリスクも伴います。どうしても必要な時以外は使用は控え、使用する場合は用法用量を守って服用しましょう。
※アナフィキラシーショックは急性のアレルギー反応を示し、体内に入ったもの(今回は薬)を異物とみなして除去を行う。この際血管が拡張され、血圧が下がり、場合によっては死に至ることもある。