実は怖い?風邪薬で起こりやすい副作用と対処法
手軽で便利な風邪薬、体調がすぐれないとき、ちょっとした症状であれば市販薬で自宅療養という方も多いのではないでしょうか。そんな時、副作用について気にしたことはありますか?
簡単に手に入る市販薬にも場合によっては重篤な副作用をおこします。身近なもの(薬)だからこそ、そのリスクについても知っておきましょう。
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副作用とは
副作用とはその薬の本来の効能(主作用)以外の作用を示し、症状としては眠気や吐き気、頭痛、めまい、下痢、便秘、湿疹などがあります。こうした症状を回避するためにも、市販薬を使用する際は必ず用法用量を守りましょう。
ただし、残念なことにたとえ用法用量を守っていたとしても発症してしまう病気もあります。市販されているものだからとといっても薬の使用には十分気をつける必要があります。風邪の症状は全て身体の免疫反応、どうしても辛い時以外はできる限り薬に頼らず治したいものです。
風邪薬の副作用
市販の風邪薬の種類からそれぞれの副作用についてみていきましょう。
風邪薬の種類 | 主作用 | 副作用 |
抗ヒスタミン剤 | 抗炎症作用 (鼻水、鼻づまり、喉の痛みの緩和) |
眠気 喉の渇き 倦怠感 めまい 吐き気 下痢 |
解熱鎮痛薬 | 解熱作用 鎮痛作用 (熱、喉の痛み、頭痛の緩和) |
胃腸障害 吐き気 便秘 下痢 湿疹 頭痛 |
鎮咳薬 | 鎮咳作用 (咳を抑える) |
眠気 便秘 一部に習慣性(依存性) |
市販の風邪薬は症状に合わせた配合となっており、喉の痛みを抑えるものであれば鎮咳薬と抗ヒスタミン剤、熱を下げるものであれば解熱鎮痛薬が配合されています。
対して、総合風邪薬(総合感冒薬)と呼ばれるものには上記の成分すべてが配合されている場合もあります。副作用が発生した事例の原因として最も多いものが総合感冒薬となっています。
抗ヒスタミン剤の副作用
抗ヒスタミン剤の代表的な成分は以下の通りです。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
- エピナスチン塩酸塩
抗ヒスタミン成分には第一世代と第二世代に分けられ、新たに開発され、副作用が少ないものが第二世代(エピナスチン塩酸塩など)とされています。ただしこの成分は効能面で第一世代(クロルフェニラミンマレイン酸塩など)に劣るとされていおり、現在でも多くの市販薬に第一世代の成分が配合されています。
副作用としては眠気や喉の渇き、倦怠感などがあるとされています。
ヒスタミンは脳内を活性化させる成分であるため、抗ヒスタミン剤によってこの成分の働きがブロックされると脳のパフォーマンスが低下して判断力、作業性が低下してしまう可能性があります。そのため、第一世代の成分を配合した風邪薬については、服用後に乗り物または機械類の運転操作ができないものが多くあります。
解熱鎮痛薬の副作用
解熱鎮痛薬の代表的な成分は以下の通りです。
- ロキソプロフェンナトリウム
- イブプロフェン
- アスピリン(=アセチルサリチル酸)
- アセトアミノフェン
解熱鎮痛薬の多くは、発熱や炎症をおこす原因物質(プロスタグランジン)の生成を阻害することで作用を示します。
副作用は胃腸障害や吐き気などです。プロスタグランジンには胃酸の分泌を抑制する作用があり、解熱鎮痛薬を飲むと胃酸の分泌調整がうまくいかなくなります。それにより胃酸過多となって胃腸への影響が出るとされています。
アセトアミノフェンは体温を調節する脳の一部に働きかけて熱を放散させるため働き方が異なり、副作用が殆どありません。
鎮咳薬の副作用
鎮咳薬の代表的な成分は以下の通りです。
- ジヒドロコデイン
- デキストロメトルファン
咳を鎮める成分は多々ありますが、鎮咳薬として配合される成分の多くは脳の咳中枢に働きかけて咳を鎮めるものになります。この成分は2種類に分けられ、麻薬性と非麻薬性のものがあります。
麻薬性のものは即効性があり、作用も強いですが、習慣性があるため常用すると止めにくくなる性質(依存)ががあります。非麻薬性のものは麻薬性のものより作用は弱いですが習慣性はありません。
副作用について、麻薬性の成分は薬への習慣性、眠気、便秘があげられます。非麻薬性の成分にはほとんど副作用はありませんが、希に眠気、めまい、便秘などの症状があるとされています。
市販の風邪薬による重篤な副作用
消費者庁のデータより、平成21~25年の5年間で市販薬が原因となって発病した例が1,225件あり、そのうち15件で死者が出たとされています。このように、市販薬は場合によって命にかかわる重篤な病を引き起こします。
肝機能障害
肝臓の機能が著しく低下する症状で、総合感冒薬や鎮咳薬によって発症した事例があります。薬を飲んで2、3日で症状が出ることもあり、初期症状としては、発熱、食欲不振、吐き気、かゆみ、発疹、黄疸が出ることがあります。風邪に似た症状なので自己判断が難しいという難点があります。
肝障害をおこす成分としてアセトアミノフェンがあります。この成分は用法容量が守られていれば幼児から使用できるほど安全性の高いものです。しかしながら、大量摂取もしくは大量のアルコールと共に摂取するとその一部が強力な肝毒素となり肝細胞を壊死させてしまいます。
スティーブンス・ジョンソン症候群
この病気は薬剤に対する免疫異常によって発症するため、どの薬を飲んでも起きる可能性があります。
初期症状としては高熱、目の充血、粘膜や皮膚の異常(水ぶくれのような発疹)があげられます。網膜の炎症によって著しい視力の低下、最悪の場合、失明や死に至る可能性があります。発症するタイミングは薬の服用後2週間以内が多く、1カ月以上経ってから発症するケースもあるといわれています。
間質性肺炎
間質性肺炎は肺胞の壁や周辺に炎症がおこり、酸素がうまく取り込めなくなる症状のことです。総合感冒薬や漢方薬によって発症した事例があります。症状としては痰が絡まない乾いた咳、息切れ、呼吸困難があげられます。
原因となる成分としてはアスピリン(サリチル酸)などがあります。この症状は風邪薬だけでなく、抗がん剤や抗リウマチ剤など様々な薬で発症する可能性がある症状となっています。
急性腎不全
腎臓の機能が低下し、尿を正常に作ることができなくなる病です。総合感冒薬での発症事例があり、症状としては尿量が少なくなるもしくは出なくなる、手足のむくみ、食欲不振、倦怠感があげられます。
原因となる成分としてはロキソプロフェン、インドメタシンといった解熱鎮痛作用をもつ成分です。その他にも血圧を下げる薬や抗がん剤、抗生物質が原因となることもあるとされています。
中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)
この症状はスティーブンス・ジョンソン症候群同様に薬剤に対する免疫機能の異常によっておこるとされ、全身の表皮と真皮が分離し、重篤な感染症を引き起こします。死亡率は20~40%とも言われ、悪化すると敗血症、他臓器不全となり死に至ります。
総合感冒薬での発症事例があり、初期症状としては発熱(38℃以上)、粘膜症状(目の充血、喉の痛み、唇の水疱)、紅斑(皮膚が赤くなること、押すと消える)があげられます。発症するタイミングは薬の服用後2週間以内が多く、1カ月以上経ってから発症するケースもあるといわれています。
原因となる成分は同定されておらず、複合感冒薬に含まれる解熱鎮痛成分に要因があるのではないかとされています。
その他にもアナフィキラシーショック、心不全、網膜剥離など市販薬が原因となって発症する病があります。消費者庁より注意喚起の公式文書が発表されておりますので参考までにご覧ください。(症例の写真が含まれますので苦手な方は閲覧にご注意ください。)
風邪薬の副作用への対処法
市販の風邪薬を使用中に違和感を感じたらすぐに使用をやめ、服用していた薬を持って(もしくはその情報がわかるものを持って)医療機関へ受診しましょう。
発症までの時間が短い肝機能障害などは早めの対応が必要です。また、スティーブンス・ジョンソン症候群のように自己免疫疾患で発症してしまう病気の場合、急に発症することもありますので少しでもおかしいと感じたら医師へ相談しましょう。
また、薬の成分によっては飲み合わせや食べ合わせが悪いものも多くあります。例えば、アルコールやグレープフルーツ、カフェイン、ハーブ、牛乳、にんにくなどは一緒に摂取することで薬の成分が変性してしまったり、効きすぎる、弱まるなどの影響がでる可能性があります。心配な時は医師や薬剤師の方に相談しましょう。
風邪の原因となるウィルスや細菌を退治するのは私たち自身の身体(免疫機能)です。市販の風邪薬のリスクを考えると、どうしても必要な時以外は使用は控え、使用する場合は用法用量を守って服用しましょう。