こんなにあるの?体温計の種類と特徴
体調が悪いなと感じた時や、病院などの検査の時、体温を測るために使うのが体温計ですが、皆さんのイメージにあるのは棒状で本体に目盛りが刻まれているもの、あるいはデジタル表示の形状のものだと思います。
確かにそれも体温計であり、一般的な物ですが、実はそれ以外にも体温計の種類はあり、それぞれに特徴があるのです。ご存知ない方も多いと思うので、こちらでは体温計の種類と特徴についてご紹介していきます。
スポンサーリンク
体温計の形状の種類
体温計を分類する上で、大きくわけると2種類に分けることができます。それが「形状」と「表示方式」になります。さらに表示方式の中には動作原理で5種類に分けることができます。
その中でも見た目で分類されるのが、この形状になります。形状には一般的な「棒状」と「プローブ+レシーバ式」の2種類が存在します。まずはこの2つの形状についてご紹介してきましょう。
棒状の体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
先述した通り、一般的なイメージの強い形状になります。それは後述される動作原理における「水銀式」や「サーミスタ式」など、家庭で使われる体温計に多い形状だからです。また歴史上、初めて作られた体温計からこれまで、この形状が主流となってきたことも要因となっています。
接触することで測定する水銀式やサーミスタ式だけでなく、技術の発展により開発された非接触型の赤外線式のものも、家庭用で販売されているものはこの棒状を採用しているものが多いです。
この形状のものは舌下温や腋下温、直腸温の測定方式で使われることが多い形状でもあります。しかし上述の赤外線式はこの測定方式には当たりませんので、あくまで多数を占めると理解しておいてください。
プローブ&レシーバ式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
温度測定センサの入ったプローブと、データ表示部及びデータ記録部のレシーバがケーブルで接続されている形状の体温計です。女性が測定する基礎体温の記録機能があるものなど、高機能なものはこのような形状となっています。
こちらは赤外線式の形状として用いられることが多いです。また液晶式でも採用されています。そのため測定方法としては鼓膜温や額の表面温度を測る際に用いられる形状でもあります。
体温計の表示の種類
それでは続いて体温計の表示の種類についてご紹介していきましょう。体温計の表示は水銀式のものとサーミスタ式を例にとると分かりやすいです。
棒状の本体中央部に液体が入った管があり、その隣に目盛りが刻印されているものが「アナログ式体温計」、本体中央部あるいはその付近にデジタル表示で体温を表示してくれるのが「デジタル式体温計」となります。
大きく分けるとこの2つですが、あと1つ女性専用の基礎体温を測定するための「基礎体温計」もあります。ここからはこの3つの体温計表示の特徴などについてご紹介していきます。
アナログ式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
体温計本体に刻印されている目盛りから体温を読み取る形式です。測定液には水銀を利用した棒型のものが一般的となっていますが、最初期に作られた気体の熱膨張式や、灯油・アルコール式のものもこの体温計になります。
体温計誕生以降、長く使用されていましたが、使用前の目盛を最低温度以下に戻す操作に強く何度も振る必要があるなど手間がかかることや、本体がガラスやプラスチックであるため、この操作中に物にぶつけてしまうなどで損傷した際に毒性を持つ水銀が流出するなどの安全性の問題、デジタル式の高精度化や低価格化が進むに連れ、現在はあまり使用されていません。
デジタル式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
サーミスタや赤外線検知回路、それを制御するマイコンを組み込んだ電子回路によって測定する近代的な形式になります。形状はアナログ式同様に使えるよう、薄型の棒状に近いものが多く、体温は小型の液晶ディスプレイなどの表示装置を通じて読み取ります。
電子回路を持つため動作には電源が必要で、ボタン電池、乾電池などを用いています。販売当初は水銀式に比べ価格が高く、精度も劣っていましたが、価格の低下と精度の改善が進められたため、一気に普及することになりました。
また電源オンでリセットされる、またはリセットボタンを押すだけで、アナログ式のような使用前のリセットの手間がないなど使いやすいことも相まって、現在では家庭のみならず病院や診療所などの医療機関でも主流となっています。
基礎体温計(婦人体温計)の特徴
現在の価格はコチラ |
女性の基礎体温を測定するための専用の体温計です。主にはデジタル体温計と同じ表示形式となっていますが、デジタル体温計は小数第1位までの表示なのに対して、基礎体温計は小数第2位までの表示となっています。
(例)
・デジタル体温計:36.5℃
・基礎体温計:36.50℃
これは女性の生理周期を把握するための基礎体温の変化は細かい推移となり、それを測定するためにJIS規格によって基礎体温計は誤差の範囲が0.05℃を超えてはならないと規定されているため、一般的なものよりもさらに細かい表示が必要となるのです。
アナログ式体温計の種類
アナログ、デジタルのそれぞれの特徴が分かったところで、ここからはその中に含まれる動作原理についてご紹介していきます。それぞれの特徴によって、どのような人に適しているかなども分かってくるので、これについてもしっかり知っておいていただこうと思います。
まずはアナログ式体温計の種類になります。こちらは主に「水銀式体温計」と「灯油・アルコール式体温計」の2種類になります。先述したように世界初の体温計である「気体の熱膨張式体温計」もこちらに当たりますが、現在は使われていないため、割愛させていただきます。
水銀式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
1866年にドイツで開発された方式で、ガラスの管の中に金属水銀を封入した体温計になります。管内に封入された水銀が熱膨張するのを目盛から読み取る形で体温を測ります。
水銀溜りの出口には留点と呼ばれる細いくびれが設けられており、水銀の逆流を防いで、温度が下がっても目盛りが下がらないように工夫されているが特徴です。使用後は本体を振り、慣性力によって目盛り上に上昇した水銀を水銀溜まりに戻してリセットします。
体温計に使用される水銀は、液体のまま経口摂取してもほとんど消化されずに便として排出されるため無害ですが、気化した蒸気を吸い込むと身体に悪影響を及ぼすため取り扱いには注意が必要とされています。そのため、現在では安全性を考慮して使用は控えられるようになりました。しかし水銀体温計はアナログ式では最も精度が高いものとされています。
灯油・アルコール式体温計の特徴
水銀式体温計普及後、上述の安全性の問題から水銀式の原理をそのままに、水銀に代わって着色した灯油・アルコールを使用したものとなります。こちらも安全性の観点で一時期普及したものの、一般的に精度の面で水銀式のものに劣ることや、電子式の普及によりこのタイプの体温計は従来よりもあまり使用されなくなってきています。
デジタル式体温計の種類
続いてデジタル式体温計の種類になります。こちらは現在普及しているものが多く、種類も大きく分けて「サーミスタ式」、「赤外線式」、「液晶式」の3種類になります。それではそれぞれの特徴を見ていきましょう。
サーミスタ式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
名称にある「サーミスタ」は熱により抵抗値が変化する素子のことを指します。これを利用して電子回路により体温を測定し、測定値を表示するタイプの体温計になります。一般には1980年代に登場し、内蔵したボタン電池を動力源としています。
測定値を数値化し内部に記録することにより基礎体温の変化を監視できるような付加機能をもった機種もあります。計測が終わると内蔵されたスピーカーから出る電子音で計測が終わったことを知らせる機能がついているものもあるのが特徴です。
サーミスタ式には「実測式」と「予測式」の2種類の計測方式があり、外箱や取扱説明書に明記されています。この2つの計測方法についてもご紹介しておきます。
実測式体温計の特徴
センサー部分の温度をそのまま表示するタイプになります。センサーの温度が体温と等しくなった時点で初めて計測完了となります。この、これ以上上がらない温度のことを平衡温といいます。
サーミスタなどデジタル式だと10分前後の時間を要し、多少時間はかかりますが、より正確な体温を表示します。最近は3分程度で測定できるものもありますが、平衡温に達するには10分かかることからこちらは完全な実測値ではありません。
予測式体温計の特徴
実測式とは異なり計測開始からのセンサー部分の温度上昇のカーブから最終的な温度を予測・計算の上で体温の表示を行うタイプです。上述の実測式の欠点とも言える「測定時間」を短縮するために、膨大な体温上昇データを統計的に処理し、演算式にして、約20秒の短時間で体温を測定します。
ただ演算しているとはいえ、あくまで予測値であるため正確性にやや難のある機種もあり、予測式の体温計を嫌う医師もいます。数学者の西山豊は予測式電子体温計の問題点を指摘しています。
そのような欠点を補うために、予測式としての計測終了の合図があった後も計測を継続したり、モードを切り替えたりすることで実測式として機能する機種も開発・販売されるようになりました。
赤外線式体温計(非接触体温計)の特徴
現在の価格はコチラ |
人体表面から出ている赤外線を検知することにより、黒体放射の原理から体温を測定します。このようなものを放射温度計の原理とも言います。
他の方式と比べて高性能ですが、その分高価となっています。また他の方式では10分程度の体温の変動を平準化した値が得られることに対し、赤外線式では測定した瞬間の体温を測定することになります。利点でもありますが、同時に測定結果に誤差が生じることがあります。
これは安静でない状態の体温であることが多いため、他の方式よりも若干高めの値が得られることが多くなってしまいます。安静を保てない乳幼児などの体温を測定できるというメリットもありますが、測定の仕方が正しくないと誤差が生じやすいという問題もあります。
主には鼻や耳、頚部、額などに計器を当てることによって瞬時に測定できるタイプがこれに相当しますが、大きく分けると「おでこ式体温計」と「耳式体温計」に分けることができます。
おでこ式体温計の特徴
額の表面温度を測定するときに使われる体温計です。消毒用薬剤の不足するような場所で使用され、接触による感染症等を防ぐために赤外線式温度計で5cmほど離れた場所から額の表面温度を測定します。
耳式体温計の特徴
鼓膜温測定方法で用いられる体温計です。中心体温の中でも特に、脳温に近い値を測定できるという利点があります。数秒で瞬時に計測できるため、安静を保つことが難しい乳幼児や、救急現場で着衣の傷病者に対して早急に概況把握するときに利便性があります。
ただ、先述した通り、挿入の角度などによって誤差が大きくなりやすいため、正確性には劣る面があります。
液晶式体温計の特徴
現在の価格はコチラ |
温度によって分子の並びが変化する「コレステリック液晶」を利用した体温計です。細かな測定はできませんが、難民キャンプ等で消毒液などの物資が少ない場所で用いられることがある体温計になります。正確な数値よりも人命が優先となるため、瞬時に現状を把握するために役立つものとなっています。